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ウォーターネットワーク代表・柴崎によるコラム

〔2005年1月〜2008年3月〕 *2006年8月8日以降〜2008年3月まではコラムをお休みしておりました。ご容赦下さい。

コラムについてご意見やご感想がございましたら、是非、柴崎宛にメールをお送りください。

2006/08/08:蘇った韓国の清流

Mother Water Project 韓国プロジェクトの準備・打ち合わせのために韓国ソウルを訪れた。

今回の訪韓で楽しみにしていたのが、ソウルの中心部に復元された清渓川(チョンゲチョン)だ。

2005年3月に「水の音原風景」韓国プロジェクトで訪れた時は工事の真っ只中で、2005年の秋に完成するの?と皆で言っていたことを思い出した。

その後、この工事が完成し、市民の憩いの場となっているということは聞いていたが、やっとその姿に対面することができた。

8月のソウルは非常に暑かった。街を歩くのに少しでも日陰を見つけて歩きたくなるくらいだ。

清渓川に近づくと緑の並木と人々の賑わう姿が見えてきた。清渓川沿いには木々が植えられ、川の歩道沿いにも自然な緑が復元されている。

ソウル中心部の清渓川01
ソウル中心部の清渓川
ソウル中心部の清渓川02 ソウル中心部の清渓川03

驚いたのは、この暑い季節だからだろうが、たくさんの人たちが靴と靴下を脱いで、川に足を入れて涼んでいることだ。最近、日本では足湯が流行っていて温泉地ではよくこういう姿を見かけるが・・・。

都会のど真ん中で川に足を入れて涼んでいる姿はとても穏やかで素敵な光景だった。この人たちは一日こうしているのかなと思われるくらいのんびりとした表情が印象的だった。

人々の手によって新たな命を蘇らせた清渓川が、これからソウル市民に新たなエネルギーを与え続けてくれることになるだろう。

この復元事業から水に対する大きなメッセージを感じてほしい。

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2006/05/30:Mother Water Project

“母なる水”、地球の水を救うアート&メッセージを募集するMother Water Projectがスタート。今年は岩手県紫波町と連携した事業を行うため紫波町を久々に訪れた。

紫波町は循環型まちづくりで先駆的な取り組みを行っている町で、2003年の「水の音原風景」コンサートで大変お世話になった町だ。

水が大切ということは誰でもが頭ではわかっている。

ただ、それが日々の生活の中で心がけされていないということは、心の奥底で水の大切さを実感していないからではないか。そんな気持ちから、人々の感性に訴えようという試みを行ってきたが、紫波町の方々はこの趣旨をよく理解していただき、このMother Water Projectも一緒になって取り組んでいただけることとなった。

Mother Water Projectの最終的な目標は、家庭、特にキッチンの排水に気をつけようということを啓発することで、集まったアートやメッセージの中からステッカーを作り、キッチンなどに貼っていただこうと考えている。

このプロジェクトは、紫波町の他、国内の各地で告知していくとともに、韓国やアイスランド、スウェーデンなどでも行っていく予定だ。

プロ・アマ問わず、自由な発想でどしどしと応募してほしい。

“母なる水”を救うあなたのアートやメッセージをお待ちしております!

Mother Water Project サイト
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2006/03/19:碁石が奏でる浜

まもなく水の音CD「 Mother Water 」と「 Spirit of Water 」の2枚リリースされる。

このCDの水音は昨年の11月に世界遺産の島・屋久島で収録されたもので、雨音、屋久杉の根元から滴るしずく、小さなせせらぎ、川や滝、波音まで、水の循環に沿った様々な水音が収録されている。

屋久島は“洋上のアルプス”と言われるように海岸から一気に2000m級の山が立ち上がっていて、黒潮にのった暖かい風が急上昇し雲が生まれ雨となる。この豊かな雨と水が屋久島の多様な生命を育んできた。

「水の島」とも言えるこの島では、至るところで水音が響いているが、これまでに聴いたことのなかった水音が「碁石が浦」の波音だ。

屋久島に着いた時に宮之浦にある屋久島観光協会を訪ねた。

そこでスタッフの方が、「私がとても好きな水音がある」と教えてくれたのが「碁石が浦」だった。地元の人しか知らないこの浜に降りると、波打ち際には黒い小石が水に濡れて輝いていた。

碁石が浦は美しい小石が音を奏でる
碁石が浦は美しい小石が音を奏でる

波が寄せて引く時に聴こえる音は、美しい金属的な心地よい音だった。碁石くらいの大きさの石同士が波によってぶつかりその音は生まれる。

屋久島の民話には、仙人が山の中で碁を打っていて、その碁石は「碁石が浦」の石に違いないという話があるそうだ。

今、日本の海岸はどんどんその姿を変えてきている。

ダムや防波堤が土砂の流れを変え、砂浜に砂が供給されなくなり、日本の砂浜はやがてなくなってしまうとさえ言われている。

ぜひ、「碁石が浦」の波音をお聴きいただき、悠久の命のつながりも感じていただければと思う。

水のつながりを止めるということは、水のつながりによって支えられている様々な生命のつながりをも止めてしまうことになるのだ。

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2005/12/29:水の行方

私たちの身の周りでも深刻化する水の災害。

台風や集中豪雨など、水に関わる自然災害が急激に増えている。記録的な降雪による被害、これも水に関わる自然災害と言っていいだろう。

さて、この水の災害の原因は何であろうか。

それは、私たち人類の活動そのものにある。地球温暖化の影響は水の姿の変化に現れる。氷河が溶け、海水面が上昇するだけではない。干ばつと洪水。水のバランスが大きく崩れる。

日本の気象研究者グループによれば、今世紀末に世界全体の平均気温は2.7度(陸上だけでは3.7度)上昇し、世界各地の河川の水量が激変すると指摘している。ユーフラテス川は41%減り干ばつの恐れがあり、ガンジス川は逆に15%増えて洪水の危険が高まると予測している。

地球の水の行方は、私たちの命の行方を左右する。

中央環境審議会の専門委員会は、世界の平均気温が2度以上上昇すると、水資源や食料生産、人の健康にも地球規模で悪影響が出る可能性があり、3度以上上昇すると、海洋大循環の停止など破滅的な被害の恐れがあると指摘している。

私たちにできることは何だろうか。今、立ち止まってこのことをよく考える必要がある。

地球温暖化を急激に引き起こしている生き物はこの地球上に私たち人類の他には存在しない。私たちの毎日の生活シーン一つ一つを見つめ直してみよう。

家庭、乗り物、買い物・・・。

水の行方は私たちのライフスタイルにかかっている。

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2005/11/27:水音に包まれて

水の音を収録するために屋久島を訪れた。8年ぶりの訪問だ。

前回は縄文杉を目指した旅だったが、今回目指すものは水の音だ。屋久島は縄文杉や屋久杉、そして世界遺産に登録された島として知られているが、この自然を生み出しているのは豊かな水だ。

屋久島は洋上のアルプスと言われるように、海岸から一気に山が立ち上がり、標高2000mまで上がっていく。この地形によってこの島には日本の北から南までの植生のほとんどのものがあると言われている。日本の自然の縮図だ。

暖かい黒潮にのった風は山を急上昇し、雲となり雨が降り注ぐ。一月に35日雨が降ると言われるほど雨が多い。森は湿気が多く木々や岩が苔むし、至るところに水の流れが存在する。この豊かな水の存在によって何千年にもわたり杉が生き続けることができるのだ。

屋久島は至るところで水音に包まれる。

森から湧き出すしずく、せせらぎ、轟音の響く滝、海亀の産卵する海は母なる波音が果てしなく続く。

地元の人しか知らないに小さな浜には、小さな石が波打ち際に並び、心地よい金属的な音が“カラカラカラ“と響く。

くわずいもの葉に落ちる雨
くわずいもの葉に落ちる雨

収録は無理かとあきらめていた雨音は、帰る日に突然やってきた。巨大なくわずいもの葉に雨音がやさしく踊った。

水の音は来年にはCD化される予定だ。優しい水音に包まれていただければと願う。

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2005/11/01:虹になったしずく

水の絵本、第一弾のタイトルが「虹になったしずく」に正式決定した。

かおかおパンダさんの絵も全て出来上がりスキャニングにまわっている。絵本の帯の表面には女優の釈由美子さんのコメントが入ることとなった。帯の裏面には、日本水フォーラムの推薦もいただき、その記述が入る。

日本水フォーラムは、2003年に日本で開催された第三回世界水フォーラムの事務局が移行した組織で、そのご縁は2001年の「水の音原風景」南米ツアーから始まる。

今思い起こしてもありえない偶然であったが、南米・イグアスの滝のある町、ブラジルのフォス・ド・イグアスに行く日に、同じ場所で第三回世界水フォーラムに向けたプレシンポジウムが開かれることになっていたのだ。その偶然が行く前に発覚し、そのシンポジウムで「水の音原風景」の音楽プレゼンテーションを実施させていただいたのだ。

水の様々なつながりを五感に訴えたいという思いにより、水と文化、水と音楽、伝統楽器とのつながりからアプローチを行ってきた。水の絵本のシリーズは、その展開の一つとなる。

「虹になったしずく」は、子供たちだけでなく大人の人たちの心に響くものになることを願っている。

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2005/06/21:水の絵本が始動

かねてから構想を暖めていた水の絵本が具体化される。

老舗の学術専門書の出版社・雄山閣さんから今年末〜年明けに出版ということで具体的に動き始めた。

絵は若手の新進気鋭のアーティスト・かおかおパンダさんだ。鎌倉に住みサーフィンを愛するアーティストで、江ノ電に乗ってアトリエを訪れ顔合わせを行った。海のエネルギーを毎日たっぷり吸収しているエネルギッシュなアーティストだ。

久々に湘南の海を見て潮風に吹かれると、なんとなく安らぎと懐かしさを感じる。やっぱり海は、私たちの命が誕生した故郷なんだろう。

水の絵本はシリーズとして計画されていて、その第一弾は水の大きな循環をストーリー化した。ポップで楽しいな作品で人気のあるかおかおパンダさんによって、これまでにない水の絵本が出来上がるだろう。

ご期待下さい!

水の絵本シリーズ

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2005/03/31:ソウルリポート(2)

韓国の環境アーティスト・Hoseob Yoon氏
韓国の環境アーティスト・Hoseob Yoon氏
ワークショップ参加者の藁筆も舞台を飾った
ワークショップ参加者の藁筆も舞台を飾った
藁筆を天から降る雨にみたてる
藁筆を天から降る雨にみたてる

「水の音原風景」韓国プロジェクトが無事終了した。

最終日は、水をテーマとしたコンサート、その舞台美術は環境アート展を行ったアーティストとのコラボレーションとなった。

地球環境をテーマとした作品を作り続けている三木祥子さん、藁筆や藁を使ったアートの東明美さん、そして、三木さんの知り合いで参加していただいた韓国のHoseob Yoonさん。

三木さんと東さんは「水の音原風景」プロジェクトがスタートした当時からいろいろな協力をいただいてきたお二人だ。

Hoseob Yoonさんは、韓国の国民大学校造形大学・視覚デザイン学科の教授で、環境メッセージを発信する作品や活動を続けている。Tシャツに様々な環境メッセージを描くことでも有名で、ソウル市内の観光スポット仁寺洞(インサドン)でTシャツを描き、無料で配るということも行っているそうだ。

今回、Yoonさんは大学の生徒たちを授業の一環としてこのプロジェクトに巻き込んでくれた。ワークショップの実施、コンサートのアートコラボレーションの準備。舞台美術を設置する材料の買出しなど、無理なお願いに気持ちよく動いてくれた。

舞台美術の環境アートはYoonさんと舞台スタッフの平野雄介くんのアイデアで、東さんの藁筆を天から降り注ぐ雨と見立て飾ることとなった。ワークショップに参加して作られた藁筆もその一部に参加していただき、三木祥子さんの韓国和紙の灯りとともに舞台を飾った。

今回の実施に関して、韓国のアーティスト・Yoonさん、そしてその生徒の皆さんの協力に本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

日本では、反日デモのことばかりが大きく報道されていたので、どんなことになるのか心配だったが、今回のプロジェクトの実施に多くの韓国の方々に協力いただき無事に終えることができた。

若い人たちと話や食事をする機会も多かったが、皆な礼儀正しくその誠実な態度に驚かされた。儒教の教えということを聞いていたが、日本人が忘れてしまった心がここにはまだ残っているんだなあと感じた。韓流ブームの原点もここにあるのかも知れない。

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2005/03/29:ソウルリポート(1)

広報文化院のものものしい警備
広報文化院のものものしい警備
工事が急ピッチで進む清渓川復元事業
工事が急ピッチで進む清渓川復元事業
水辺の再生は間もなく
水辺の再生は間もなく

「水の音原風景」韓国プロジェクトでソウル入りをして2日目。会場の準備も無事終わり、アート展がスタートした。

日本大使館前では「竹島の日」の制定に対する抗議デモの声が大きく響いていたが、会場となる広報文化院は少し離れており、今はこちらまでおしかけることはないと聞いて少しホッとした。ただ、建物の入り口では韓国警察の人が楯を構えて固めていて、ものものしい雰囲気で気軽に来場してもらえるのか不安がよぎる。

この日、尺八・田辺氏の知り合いを通じて韓国の文化事業に大きく関わっている方との打ち合わせも行った。

清渓川再開発が今年の9月に完成し、ソウル市では「世界都市祝祭―開天」というイベントが開催され、「水の音原風景」コンサートをそこにつなげようという。韓国の重要無形文化財で笛の李生剛先生の60周年記念コンサートへの田辺氏の出演の話しも具体化し、文化と環境を通じた交流へ更に進むことができればと思う。

清渓川復元工事は宿泊しているホテルからそう遠くない場所にある。工事現場の近くを歩くと、あちこちで工事が急ピッチで進められている。まだ、再生後の姿はまだイメージできる段階ではないが、ソウルという大都市の中心部に元々あった川が蘇ることはとても意義のあることだ。

我々は元々、川のほとりに住み、その川、水とともに生きてきた。都市から川やその水の姿が失われてきたということは、その地域の生命力も失われてきたと言える。

水辺の潤いだけでなく、地球温暖化防止や防災ということも含め、水辺の再生や川や水のつながりを見直すことがこれからの都市にとってますます重要となる。清渓川再開発に今後も注目していきたい。

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2005/03/25:揺れる島

日韓関係が一つの島をめぐり揺れている。

日本では「竹島」、韓国では「独島」と二つの名前で呼ばれている島は、豊かな海、漁場に囲まれた島だ。

この島は単なる領土問題ではなく、日韓の主権をめぐる歴史に揺れ続けてきた。

島根県の「竹島の日を定める」条例の制定に端を発し、韓国の日本大使館前では激しい抗議活動が行われている。

3月28日から「水の音原風景」韓国プロジェクトを韓国・ソウルで実施する。2005年は日韓友情年で、このプロジェクトもこの記念事業の認定を受けて準備を進めてきた。この島の問題に端を発し、様々に計画されている日韓交流事業も大きく揺れている。

韓国での抗議行動の報道を目にすると、このプロジェクトを無事に実施できるのか?と不安になってくるが、こんな時にこそ、文化・環境での交流をたんたんと続けていくことが重要だ。

これから更に深刻となる地球環境や資源の問題は特定の国や人だけで解決できるものではない。国境、人種、信条、文化を超えて大局的な判断ができなければ我々人類の繁栄はありえない。水が国境、人種、信条、文化を超え全ての生命をつないでいるという認識とともに、水や大地、自然、生物など、地球に存在するものは地球の共有財産と見る思想が必要なのだ。

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2005/01/01:水に沿った生き方

台風、津波、洪水。

2004年は、水の脅威、その力の巨大さを改めて実感することが多い年だった。皆さんも水の脅威を感じる場面が身近になっていると感じている人が多いのではないだろうか。

世界的な水のバランスの崩れは、様々な自然災害を新たに生み出している。ここ10年間で水に関わる自然災害は世界的に2倍近く増えているとも言われている。その原因は、地球温暖化や自然環境の破壊など地球環境の変化によるものであり、私たち人類の活動そのものによるところが大きい。

水によって命を保たれている私たちが、水に大きなダメージを与え続けてきた。そのことは、これからどのような結果をもたらすのだろうか・・・。

はるか、はるか昔、太古の海で誕生した命。そこから今の我々に至るまでに、35億年以上の時が流れたと考えられている。水の存在によって誕生した命は、この長い年月、水の性質に沿うことによってのみその命をつないできた。

私たちの生命活動も全て水の性質に沿って成り立っている。食事で摂った栄養素、呼吸で摂り入れた酸素、これを体の各細胞に運ぶのも水。老廃物を体の外に運び出すのも水。水がなければ血液も一滴たりとも流れない。味覚、嗅覚、視覚も全く働くことはない。体温や浸透圧の調節など、我々の体の働きは全て水の性質に沿って成り立っている。

我々は、水に沿った生き方でしか、その命をつないでいくことはできない。その考えをもとに、我々の生活を今見直す必要があるのではないだろうか。

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